『海賊とよばれた男』百田尚樹

1945年(昭和20年)8月15日。世界中を敵に回した、日本の戦争は終わった。東京をはじめとした主要都市は徹底的に爆撃されて瓦礫の山となり、海外資産のすべてを失って莫大な賠償金が課せられようとしていた。これから日本はどうなっていくのだろうかと、全員が途方に暮れて失意に包まれているとき、毅然と店員を集めて話す男がいた。国岡商店の国岡鐡造店主である。わずかに残った店員を前に、鐡造は「愚痴をやめよ、愚痴は泣きごとである。亡国の声である」「日本には三千年の歴史がある。戦争に負けたからと言って、大国民の誇りを失ってはならない。すべてを失おうとも、日本人がいるかぎり、この国は必ずや再び立ち上がる日が来る」と訓示を述べた。だが、失望から立ち直り武者震いする店員たちに、売るべき商品「石油」がそもそもないという現実が襲いかかる。「店主、このままでは、国岡商店は潰れます。涙を呑んで人員整理を」という進言に、鐡造は「馘首はならん!」と解雇を断固拒否する。戦後、住処も食糧事情もままならない情勢下で、日本の復興に向かって闘う男たちの物語が始まった。

読了後はなんだかお腹いっぱい。国岡鐡造の学生時代から死ぬまでの人生がぎゅーっと凝縮されているのですが、最初から最後まで鐡造も含め出てくる男たちの熱気がすごい。戦時中という時代背景もあってか、生き残ることに必死で、何をやるにも貪欲。でも汚いことは絶対やらない、筋は通すという志の高さがまぶしいです。今の時代に置き換えれば昼夜問わず家庭を顧みず働き続けるこの会社は立派なブラック企業なのでしょうが、それを誰も苦だと思っていない。時間がないなら寝る時間を削ればいい、障害があるなら力を合わせて乗り越えればいい、金がないなら家財を売ればいい、それでもだめなら倒産してみんなで乞食をやればいいって感じで、会社全体がひとつの家族であり、運命共同体。そんで何かをやり遂げたあとはみんな揃って男泣き。つられて私も泣きました。そしてどの時代にも悪い奴ってのはいるもので、商売の邪魔をしてくるのですが、それを正当法でぶっ潰していく爽快感。池井戸潤が好きならこれも絶対好きなやつです。最後まで戦い続けた男の人生は何もかもが圧倒的でした。というかこれが実話だってのがすごいわ。